ファンクの帝王『ジェームス・ブラウン』を支えた2人のドラマーの名演・ビート解説!【ジョンジャボ・スタークス】【クライド・スタブルフィールド】

音楽ジャンルの”ファンク”って知ってる?

普段ロックしか聞かないから、全く分からないよ…

グルーヴを語る上で「ファンクミュージック」は切っても切れない関係です。

そして、良いグルーヴはすべてのポップミュージックに通じるものです。

そこで今回は、ファンクの帝王「ジェームス・ブラウン」を支えた

  • ジョン・ジャボ・スタークス(John Jab’o Starks)
  • クライド・スタブルフィールド(Clyde Stubblefield)

2人のドラマーについて紹介します。

僕はドラムを演奏する上で、ファンクを聞かないのは、とても勿体無いと考えています。すべてのドラマー、ひいては音楽を楽しむ人々全員に知ってほしい2人を紹介しますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。

ジェームス・ブラウンバンドを支えた2人の名ドラマー

まずは動画から!ジェームス・ブラウンバンドの代表曲「Sex Machine」を聞いてみましょう!

そもそも”ジェームス・ブラウン”ってどんな人?

1950年代中盤から歌手としてのキャリアをスタートしたジェームス・ブラウンは、もともとR&B色の強いシンガーでした。

しかし、64年に発表した『Out Of Sight』を皮切りに、

  • I Got You
  • Papa’s Got A Brand New Bag

など、革新的な名曲を量産。

「16分のフィールで反復するリズムビート」であるファンクミュージックを編み出すこととなります。

運命的とも言える2人のドラマー

数々の名曲を支えていたのは、サックス奏者のメイシオ・パーカーの実兄であるドラマー、メルヴィン・パーカーでした。

しかし、彼は65年に兵役。

そして空いたスツールに座ったのが、

  • ジョン・ジャボ・スタークス(John Jab’o Starks)
  • クライド・スタブルフィールド(Clyde Stubblefield)

今回紹介する2人のドラマーだったのです。

彼らは同時期にジェームス・ブラウンのバックバンドに在籍し、黄金期とも呼べる60年代後半から70年代初頭で活躍しました。なんだか運命を感じませんか?

ドラマー”ジョンジャボ”の功績

一人目のドラマー「ジョン・ジャボ・スタークス」

通称”ジョンジャボ”は、1970年3月に結成されたThe J.B.’sでの功績が大きく、

  • Get Up (I Feel Like Being A) Sex Machine
  • Super Bad
  • Soul Power
  • Talkin’ Loud and Sayin’ Nothing

などの曲で名演を聞くことができます。

このバンドはジェームス・ブラウンのヨーロッパツアーにも帯同し、大傑作ライブアルバム『Love Power Peace』にて音源を残しました。

バンドメンバーに罰金制を設けて演奏に緊張感を持たせたなど、豪快かつ繊細なフィーリングからなされた数々の逸話で知られるジェームス・ブラウン。The J.B.’sは、バンドメンバーが賃金ストライキを起こしたのがきっかけで結成されたと言われています。

ドラマー”クライド”の功績

二人目のドラマー「クライド・スタブルフィールド」。

通称”クライド”は

  • Cold Sweat
  • Mother PopCorn
  • Funky Drummer
  • I Got The Feeln’
  • Say It Loud – I’m Black And I’m Proud
  • Get Up, Get Into It And Get Involved

にてファンキーなグルーヴを繰り広げました。

その中でも『Cold Sweat』『Funky Drummer』はまさに白眉の出来。

そちらについては後述いたします!

日本では馴染みのないドラマーかもしれませんが「ローリングストーン誌が選ぶ史上最も偉大な100人のドラマー」にて、2人そろって6位を受賞しています。

最高の2人の”ドラムスタイル”とは?

一時期はステージに何台ものドラムセットとプレイヤーを配置してパフォーマンスをしていたジェームス・ブラウンですが、とりわけこの2人のコンビが有名です。「ファンクの帝王」が惚れたドラムとは、一体どんなものだったのでしょうか?

バラードや軽快なシャッフルビートを担当した”ジョンジャボ”

1938年生まれのジョンジャボは、元々は1959年にブルースシンガーであるボビー・ブランドでドラムを演奏していました。

甲高いスネアと音程高めのバスドラムで奏でられる軽快なビート。そこに目をつけたのが、ジェームス・ブラウンでした。

ジェームス・ブラウンは、ジョンジャボに、何度も「ウチのバンドで叩け」とオファーをし続け、根負けした形でジェームス・ブラウン・バンドの一員となります。

ジョンジャボの演奏スタイルにはジャズのバックボーンがあるために、そのスウィングしたフィールをバンドの基盤として据えたかった、というジェームス・ブラウンの熱い意向が伺えます。

楽曲で言うと彼のあだ名を楽曲にした『Jabo』では、ライドシンバルのカップ部分をリズミカルに叩き、また有名曲である『Get Up (I Feel Like Being A) Sex Machine』でも細かな刻みを多用して、いわばラテン・ジャズのような躍らせるサウンドを生み出しているのが大きな特徴です。

いわばジェームス・ブラウンは、それまでのR&Bから「強いラテンおよびジャズのフィール」を融合させ、ダンスミュージックに特化したサウンドを持ち込みたかったのでしょう。

ジョンジャボを選んだ人事にその考えが透けて見えます。

ジョンジャボの演奏スタイルは、スティックの握りはトラディショナルグリップを用いて、脱力してなでるように演奏し、軽快なファンクグルーヴを生み出しています。

ハードなファンクビートの曲を担当した”クライド”

一方のクライドは、ジョンジャボより5歳年下の1943年生まれ。

8歳のころからパーカッションをはじめた彼は10代からプロとしてミュージシャン活動を始めました。

1960年代はじめにはデトロイトのブルースシンガー・ギタリストとして有名なジョン・リー・フッカーの伴奏を務めたエディ・カークランドとの共演を果たしています。

彼の演奏方法の特徴としては、古くからのジャズドラマーにみられる左手側にライドシンバルを置いているのが特徴です。

というのも、ビートの「刻み」に力点を置いたからでしょう。

バックビートを叩く左手は、マッチドグリップ(右手同様に手の甲を上にした握り方)で力強いビートを叩き出す印象が強くあります。

異なるドラムスタイルでも、親友となった2人

ジェームス・ブラウンのバンドに加入し、ジョンジャボとクライドが合流したのが1965年。

彼ら2人はそれぞれ異なる対照的な個性を持ったためか、いつしか合奏すると補うように「合う」親友同士となりました。

2000年以降は2人で「The Funkmasters」と名乗り、世界各地を巡業し、様々なライブハウスで演奏をしています。

知人に、丸の内コットンクラブで彼らの演奏を見た方がいるのですが「強烈なビートでありながら柔らかすぎるようなタッチに驚かされた!」と仰っていました。

“THE ONE” がグルーヴを作る、数多くサンプリングされた楽曲

ジェームス・ブラウンは彼自身の音楽についてこう語っています。「 “THE ONE” がグルーヴを作るんだ」。これはグルーヴの1拍目を単純に強くアクセントをつければファンクネスに即したグルーヴが生まれる、という単純な話ではありません。

ジェームス・ブラウンが生み出したFUNKの概念「THE ONE」

ジェームス・ブラウンはそれまで主流だったブギウギのリズムを中心とした(そして数多くのロック曲も同様に)2拍目と4拍目を強調したシャッフルの楽曲とは反対に、1拍目と3拍目を中心にしたユニークな楽曲である『Papa’s Got a Brand New Bag』によりFUNKの帝王として出世していきました。

この1拍目を強調して演奏することに”FUNKらしさ”があるとして「THE ONE」と呼ばれることがあります。

この「THE ONE」については様々な解釈があるのですが、僕は打楽器のみならず、管楽器、弦楽器も(実際に音を出さずとも)同様にビートを刻み、流れるリズムが帰結する箇所が “THE ONE”であると考えています。

話がそれましたが「THE ONE」はファンクのみならず、多くのダンスミュージックにも同様にして用いられる考え方です。

バンド全体が “THE ONE” という概念を認識し、奏でていくことで、合わせてつられて聴衆も盛り上がり躍らせる。歌を引き立てるような演奏ができる。

そして、ジョンジャボ、クライド、2人のドラマーもこの “THE ONE”という概念に肯定的だったとされています。

前述したジョンジャボの名演の数々はJBバンドに感性を、そしてクライドは文字通りフロアを躍らせるだけの爆発力をもたらしました。

「Cold Sweet」は、150曲以上にサンプリングされている!

ジェームス・ブラウンのファンなら外せない楽曲『Cold Sweat』。

こちらは“ファンキーな曲”として思い浮かべた際に3本の指に入る強烈なリフを持った曲ではないでしょうか。

ホーン隊を中心にベースとギターが絡み合い、その土台となるクライドのドラムビートは非常に独特なものとして、多くの楽曲でサンプリングされてきました。

動画をご覧いただければわかりますが、クライドは1拍目にバスドラを強烈に入れつつ2拍目にスネアのアクセント、そして本来4拍目に来るはずのスネアを半拍ズラして裏に入れたのです。

こうしたスリップビートを生み出したことで楽器隊、そしてJBの短く唸るような叫び声が一種のミニマムなポリリズム的要素を孕みました。

曲展開がありながらも、ワン・コードセッションの中毒性も生み出す最高のファンキービートです。

なお、『Cold Sweat』はPart1、Part2と設けられており、Part2ではメイシオのサックス・ソロに続いてクライドのドラムソロも収録されています。

「Funky Drummer」は、ヒップホップにまで応用された

そして、クライドの名演として外せないのが『Cold Sweat』の3年後に発表された『Funky Drummer』

 

シンプルかつ16分のフィールが入ったクールな黒いグルーヴは、曲名といいリズムソロがある曲構成といい、彼のために作られた曲とも思われます。

7分間に渡るファンクビートは後半にクライドのみとなるドラムブレイクは、そのまま彼の代名詞となりました。

そして、このブレイク部分からサンプリングして、その上にラップを載せたヒップホップは世界中で大ヒット。汎用性の高い“ブレイクビーツ”が萌芽した楽曲だとも言えます。

例えば、パブリック・エネミーが『Rebel Without A Pause』や『Fight The Power』がこの曲の曲の途中の20秒程度のドラム・ブレイクを使用しました。

ほかにも、N.W.Aドクター・ドレーLLクールJランDMCビースティー・ボーイズなど、枚挙にいとまがありません。

ヒップホップ史上で最も愛され、リスペクトとともに借用した楽曲とも言えるでしょう。

意外なところでは、ワム! のジョージ・マイケルもこの曲をサンプリングしていいます。

残念なことに、楽曲の作曲者としてクライドの名前がクレジットされていませんでしたので、サンプリングによる印税を彼が受け取ることはなかったそうですが、彼の名演が聴き継がれているという事実は把握しておきましょう。

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今は学生のかたも金銭的な負担が少なく音楽の幅を広げられる時代ですし、ぜひ聴いてみて、まず音楽を楽しんでみてくださいね。

様々な音楽に影響を与えた偉大な2人のドラマーの”最期”

2人のドラマーは「FUNKの帝王」ジェームス・ブラウンを支えただけでなく、ミュージシャンズ・ミュージシャンとして多くの尊敬を集めていきました。

現在では、もう二人の演奏を生で聞くことはできない

惜しくもジョンジャボは2018年5月1日に享年79歳で、クライドは2017年2月18日に73歳でこの世を去りました。

偉大なミュージシャンの訃報を聞くと「あと数年早く生まれていたら…」と悔やむものですが、立て続けに2人が亡くなったのは本当に衝撃でした。

しかし、天国では2006年にマイケル・ジャクソンに弔辞を読まれるなど盛大な葬式が実施されたジェームス・ブラウンはもちろん、彼の相棒のボビー・バード、ベーシストのバートランド・オドムらも数多くこの世を去っていますし、名だたるホーンプレイヤーも居るはずですから、今ごろ陽気にセッションしているかもしれませんね。

偉人の最期には、心温まるエピソードも。

クライドはジェームス・ブラウンのバンド脱退後は地元のミュージシャンと活動してソロアルバムや、前述のとおりジョンジャボとアルバムを制作をしていましたが、2002年より癌を含む多くの病気に罹ります

アメリカは国民皆保険ではありませんので莫大な治療費が必要となるのですが、それを救ったのは後進のミュージシャンでした。

2016年にクライドが明かしたところによると、プリンスが9万ドルにも及ぶ治療費を肩代わりしたそうです。情けは人の為ならず、ですね。

天国でセッションしているであろう2人から、あなたは何を学びますか?

今回は、ジェームス・ブラウンを支えたドラマーとして、二人の偉人ドラマーを取り上げました。

先ほどもお伝えしましたが、彼らドラマー2人は親友で仲がよく、まさに名コンビという言葉がピッタリでした。

そんな二人は「聖典 ザ・ファンク・ドラム」(原題:Soul of The Funky Drummers)というドラマー向けの教則ビデオを発売しています。

こうした後進育成の活動も愛される所以のひとつでしょう。

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セッションを通じたリズムアプローチへの分析、インタビューなどは、ドラマー以外の楽器プレイヤーでもリズムに対するアプローチとして大変興味深く、パーカッションも歌を奏でると認識出来るオススメの一本です!